[本文1883]【本年、久米具志川郡の前の地頭代上江洲の善行を褒嘉して以て爵位を賜ふ。】久米具志川郡は、上届未年に、痲疹流行する有り。而して子牛に至りても痘瘡流行し、加ふるに飢饉を以てして百姓貧苦し、其の流行に逢ふ毎に力の療治する無き者有り。幸に前の地頭代上江洲有り、薬財を動発して窮民に分給す。且蕃薯二万zばかりを発出し、家資の厚薄を看、人数の多寡を察して、或いは借給して利息を取らず、或いは売給して還価を寛くし、或いは発売して其の価を低くして、以て療治に資す。又、貢賦を奉納するの時、或いは郡民の力の納賦する無き者有れば、即ち大米・藺・楮等の件を借して其の貢賦を完うせしめ、而も利息を免ず。又該郡、前年頻りに風旱に逢ひ、百姓貧苦して、エム継ぎ難し。該洲、大米二石五斗・蕃薯千四百z・鉄樹五千zを発出して、或いは借給して息を免じ、或いは売給して還価を遅くし、或いは価を低くして発売す。但に此れのみならず、更に其の貧苦を極むる者を見れば、即ち直ちに恵給して価銭を収めず。又、平日、治病の力無き者有るを見れば、即ち大米・豆醤・薬財等の件を頒恵して以て療資を助く。又伊の先父上江洲在世の時、常に素綿布・練蕉布・間板等の物を買貯へ、郡民の貧乏にして送葬の資に乏しき者有るに遇へば、即ち貯ふる所の物件を動発して、之れを借し之れを恵みて以て葬礼を全うせしむ。該の子上江洲に至りても、亦善く父の志を継ぎ、周く郡民を済ふこと父に異ならず。又、胥役の内、貧にして裝粉の備へざる者有るを見れば、時節を酌量して衣裳を恵与し、以て公を弁ずるの便を得しむ。又該郡、多年困疲し百姓労苦するに因り、総司等、該洲をして指揮小司と為らしむ。時に厥の後より、心を尽くし廬を発して善く指揮を加へ、諸役・百姓を鼓舞し、其れをして各感服を致さしむ。是に于て、在番・胥役・頭目等、褒賞を酌賜するを乞ひて呈称し、高奉行・中城御殿大親・総司等、印結を加具して朝廷に禀明する有り。法司王に奏して、其の行を褒嘉し、座敷位を賜ひて以て恩典を示す。