[本文1894]【本年三月二十五日、伊平屋島野甫・島尻両村の西方洋面に夷船一隻の到来する有り。】該夷船此の日、野甫・島尻両村の西方洋面隔離すること一里五合許りに在りて巧駕往来す。小間して、夷人二十八名有りて、杉板四隻に分坐し其の浜にj来す。言語通ぜず文字暁らず、手を用つて比勢し、物件を請求す。該島人、活牛二疋・活羊三疋・活猪二疋・活鶏二十三隻・麦五十六束・蒜八十z・葱二十九zを送給す。該夷、乃ち遠目鏡一個・剃刀一把を送給して、以て謝礼を致す。島人固辞するも、而も聴従するを肯んぜず。勒ひて其の件を置き、本船に回坐して、東方に向ひて駕去す。其の船形・人貌及び其の装扮を見るに、恰も阿蘭陀人船の図に似たり。