[本文1913]【本年、座間味郡阿嘉村の仲村渠仁屋及び其の母の善行を褒嘉し、母に物件を賜ひ、渠に爵位を賜ふ。】該渠及び母の両人、心を存すること素より善し。村民の貧苦するを目撃すれば、時に銅銭を発借して以て臨時の用を済ふこと有り。本息を総算するに已に三万九千貫文に及ぶも、皆癘ニを行ふ。又銅銭二万貫文を給して以て公賦の敷かざるを補ふ。且銅銭一千五百貫文を捐して以て郡民の公用に備ヘ、其の益を貽すこと少からず。又該両人、満腔孝愛にして、先祖の祭に逢へば、愨乎として誠を致す。又、郡民に於ても、交はるに和睦を以てす。又親族・奉磨E村人の家道貧乏なる者に於ては、或いは大米を給し、或いは物件を与へて、以て恤賑を行ふ。且疹痘流行の時に当りては、惟に米銭を恵給するのみならず、更に応用の物件を派与して、以て療治の需と為す。且貧人有りて葬資を欠乏するの時に遇へば、即ち物件を給して以て葬礼を全うせしむ。且家の回禄に逢ふ者有れば、食を給して収差し、屋を造りて居住せしむ。至若、饑荒に逢ふの時、貧乏者を視れば、或いは蘇鉄を給し、或いは応用の物件を与へて、以て急迫を救ふ。又該渠、母親の身老い病に染むるに因り、益々孝心を励まし、側に侍して調養し、凡事母の志に承順して、少しも違悖する無し。闔郡の人等、常に該母子の善行を視て感心せざるは無し。是れに由りて母を賞して白綿布二端・綿子一把を賜ひ、子を賞して越級して黄冠位に陞せ、以て善行を表す。