[本文1927]【本年、八重山島黒島首里大屋子の功労を褒嘉して綿子を賞賜す。】黒島村は、多年困疲し、人居僅少なり。更に兼ぬるに地畝は多く石籍に属し、産物幾ばくも無し。麻・棉・藍等の項に至るも、亦栽培多からず。受くる所の公布は、毎年購買して以て織調を為す有り。百姓人等気力奮はず、農業甘怠し、貫を欠き賦を滞りて其の困窮を極む。上届亥年、大屋子をして百姓を指揮せしむ。時に厥の後より百姓と相議して地畝を開闢す。其の時、神酒・焼酒等の件を送給して百姓を勧め励まし、気力を協同して之れを闢き之れを耕す。是を以て次年よりして来、諸凡の賦税倶に納清することを得、毎日のエムも亦余有りて逋無し。又多く麻・棉・藍等の項を栽ゑ、上は而ち公布を調弁し、下は而ち衣服を優備す。又該村百姓、六処に分居して指揮を施し難し。該大屋子、吏胥に着令して頭を分ちて教を加へしむ。且婦女の力を公布を織ることに奪はれ、農業を兼ね修めること能はざるを見て、乃ち婦女を引誘ひ、之れをして期の如く公布を織成し、其の余力を以て農業に励修せしむ。且饑荒の時、窮民の貢賦を欠滞する者有るを見れば、即ち大米を給し、其れをして納清せしむ。且農の時に当りても、徭役を用ひず。凡事村の為に籌画して、百姓をして家資饒に就かしむ。是れを以て申年以来、下次の貢賦を預備し、更に米穀の儲有り。今既に此くの如し。百姓逐年饒に就き、而して習俗も亦善美に帰し、挙村感服せざるは無し。是れに由りて該島在番・頭目等、朝廷に褒賞を酌賜するを詳請す。法司王に奏して、綿子三把を賞賜して以て盛典を示す。