[本文1937]【本年三月二十一日、八重山島に異国船一隻の到来する有り。】此の日、異国船一隻有りて、八重山島古米郡小浜島タヒ崎の洋面に漂到す。吏役等、上船して之れを見るに、二人有りて身体疲倦し、洋中遭難の模様有り。即ち給して湯粥を喫せしめ其の性命を救ふ。既にして来歴を訪問するに、言語文字都べて是れ通ぜず。手を用つて様を為し、船を修するの間、上岸して寄居せんことを懇求す。即ち窩鋪を浜に造り、其れをして居住せしむ。其の後、船身の傷ふ所を将て自ら修葺を行ふ。且其の需むる所に随ひて物件を恵給す。該異人、感じて謝を称す。二十三日午刻に揚帆開洋し、未申方に向ひて去る。其の人相・衣服及び船形、図を披きて之れを見るに、恰も阿蘭陀の人船に似たり。