[本文1940]【本年十一月二十六日、久米島に異国船二隻の到来する有り。】此の日、異国船二隻有りて、久米仲里郡儀間村大口洋面に漂到す。其の洋面は岸を隔つること約一里余。時に異人十四名有りて、杉板二隻に坐駕し、盪来し上岸す。手を用って様を為し、活牛を要求す。隨ひて牛三口を与ふ。但々二名の容貌・頭髪・言語・問答を見るに、日本人に似るも、其の粧扮は、阿蘭陀人に似たり。二人皆説くには、我等は参阿国人に係る。原、共に四名なり。去年十二月、本地に在りて開船し、洋中に駛到するのとき、風に遭ひ漂流す。幸に亜米理幹国船に遇ひて救護せられ、同じく該国に到る。今、我等二名、意、先に琉球に到り転じて本国に回らんとし、亜鉛に搭駕す。其の余の二名は該国に留在す等語と。既にして仍杉板に駕し、原船に回到す。昏夜開船して去向を知らず。