[本文1943]【本年、八重山島平久保村の前盛筑登之の功労を褒嘉して爵位を賞賜す。】前盛は、人品凡ならず、村人と交はるに和睦を以てす。且平久保村は、積年困疲し戸口減少して、柵垣を設建して以て山猪を防ぐ能はず。耕する所の地畝、狭益々狭に就く。但々近日に至りて、該村、興に就き生齒蕃昌して、百姓、其の地畝の狭きを以て、広くは耕種を行ふを得ず。該盛、村民を督率して、猪柵を築立するもの長さ八百二十間余、地畝を闢成するもの三十二万坪余なり。其の時、神酒十八壜・焼酒六十沸・猪四口を給発して以て鼓舞を示す。又該島諸船運ぶ所の穀物は、朝廷経に旧穀を装運せしむれば、則ち広く地畝を墾きて多く播種を為さざるべからず。該盛、村民を督率して地畝四万四千八百坪を開墾し、粟穀を播種す。時に厥の後より粟を獲ること頗る多く、諸般、旧穀を装載するの期を失はず。且黒豆五斗六升を将て村民に分与し、其の粟を刈るの後を俟ちて続いで黒豆を種ゑ、毎年多く出産を得て、益を貽すこと少からず。是れに由りて朝廷、黄冠位を賞賜して以て其の功を表す。