[本文1958]【本年、美里郡東恩納村の島袋筑登之親雲上の善行を褒嘉して爵位併びに物件を賜ふ。】美里郡東恩納村は、積年困疲し、貢賦欠額して、百姓人等其の労苦を極む。去年、改めて地畝を割り百姓に分授し、之れをして耕種せしむ。時に村民島袋有り、深く百姓の労苦を憫み、自已に二十二地を加授して以て百姓の労を省く。又此れより前、其の村に銅銭九千百五十貫文を借与し、其の村興に就くの間、息を免じ期を寛くす。且銅銭五千六百十貫文を借与し、典する所の一石四斗二合五勺の水田を償還して村民に交授し、之れをして耕耘せしむ。又前年、疱瘡流行し、去年疫癘に伝染するの時、家道貧乏なる者を見察し、大米一石一升を分給して其の療資と為す。又上届辰年饑饉の時、大米五石一斗六升・麦二石六斗六升を将て、利息を加へずして村民に分借し、以て其の饑を救ふ。且饑餓して将に死せんとするの小民を憐み、麦三斗一升を分給して以て蟻命を救ふ。但に此れのみならず、域中廬居するの人民に於ても、亦大米四石八斗六升を将て、息無くして借給し、以て急迫を救ふ。其の親族の貧人に至りても、屡々物件を給し、其れをして饑寒に至らざらしむ。又村人の貢賦を欠するの時に逢へば、即ち米穀を借与して以て其の欠を補ひ、闔村の百姓大いに便宜を得。是れに由りて朝廷、勢頭座敷位併びに白木綿布二端を賞賜して以て其の善行を表す。