[本文1959]【本年、八重山島登野城村の伊勢戸上地の善行を褒嘉して爵位を賞賜す。】八重山島登野城村の伊勢戸上地は、心を存すること厚実にして、村人と交はるに和睦を以てす。又去年、大風屡々起り、東作を吹き損じ、百姓等、貢を欠き賦を滞りて甚だ労苦に及ぶ。該上地、貧家を見察して大米三石一斗を配給して貢賦を完納せしむ。又該村栽うる所の番薯、偶々虫虐に逢ひ結実甚だ少なく、百姓人等、エム継ぎ難く、皆粗菜・蘇鉄・実を食して聊か日食を継ぐ。是の時、十月下旬疫癘大いに臻り、毎家臥床する者甚だ多く、或いは療資乏を告げ重病に及ぶ者有り。該上地、深く憐憫を垂れ、各家に巡到して病を問ひ、復細さに飯食の有無を問ひ、其の食無き者に至りては、大米一石六斗一升余併びに豆醤五升を派給して以て餓リを免れしむ。又該島、華人の淹留するに遇ひ、屡々村に投単して肴菜を需索する有り。該上地、歳已に凶荒にして民調辧に苦しむを目撃し、即ち牛二疋の折価大米二石五斗を発給す。其の村に給するの大米共計七石四斗七升、甚だ村中に益する有り。是れに由りて朝廷、赤冠を賞賜して以て其の志を旌す。