[本文1987]【本年、八重山島平久保村の大浜仁屋を褒嘉して爵位を賞賜す。】八重山平久保村の境内安良に有る所の地畝は、原、柵垣を設けて以て山猪の害を防ぐ。上届未年、疫癘痲疹流行するの時、村民斃死し戸口減少して、遍く其の柵を修する能はず。只柵の囲む三千二百坪を得て、以て耕耘を為し、其の余は荒蕪に置きて、以て貢賦の欠を致す。若し仍猪柵を設けて広く耕耘を為さざれば、則ち百姓極めて困窮に及ばん。是を以て上届午年、村民皆議して、猪柵を設建す。時に本村の大浜有り、焼酒三十沸・活豚一口・神酒中壷六個・大米一石五斗起を動発して村民に賞給し、其れをして力を励まして柵を建てしむ。故に九十名の力を将て、僅かに五日の内に設柵成を告ぐ。其の柵は長さ一千九百八十五尋・高さ五尺より七尺に至る。即ち該捨つる所の荒蕪の地に於て、旱田を懇開するもの四万四千八百坪。以て粟を栽うるを得、翌年以来、貢賦を完納して、毫も欠無し。又村民の貧乏にして牛馬を畜すること能ふ莫くして農務の妨を致す者有り。該浜、給するに牛馬を以てす。又前年駅亭を改作するの時、該浜、村中に木匠人無きを以て、大米三斗七升起を発して、他村より匠人をレひ来り、焼酎二十沸・神酒中壷三個・活豚二口を発給し、匠人等をして力を励まして造作せしめ、日ならずして成を告ぐ。但に此れのみならず、路を修するの時に至りても、亦焼酎十沸・神酒中壷三個を給して以て鼓舞を示し、甚だ村中の利益と為る。伏して乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、百姓等僉呈し、在番・頭目・胥役等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて筑登之座敷位を賞賜して以て褒典を示す。