[本文1988]【本年、西原郡小波津村の呉屋筑登之親雲上の善行を褒嘉して上布を賞賜す。】西原郡小波津村の呉屋筑登之親雲上は、孝心甚だ厚く、其の父母堂に在すの時は、特に衣食の奉を次かざるのみならず、凡事其の令する所に順ひて朝夕孝を尽くし、之れをして心を歓ばせ日を度らしむ。其の老邁するに及び、愈々衣服を備へて、以て親の体を蔽ふ。父母辞世の後に至りても、亦在すが如きの誠を尽くし、以て祭祀を行ふ。又内は親族より外は村人に至るまで、交はるに和睦を以てす。且嫡家の貧乏にして債の為に困しめらるるを見るや、即ち之れが為に慮を発し、其れをして利息を低くして改めて他家に借り、高利の債を償還せしむ。更に搖会を設けて、其れをして早く収めて負ふ所の欠債を償清せしむ。且祭祀・佳節等の日に逢ふ毎に、物件を村人に送給して以て補助を為す。且痲疹痘瘡及び凶歳の時に逢ふ毎に、或いは米銭を動発し、或いは応用の物件を発して、親族・村人の貧者に派給し、以て其の急を救ふ。且貧者の葬資を欠乏するの時に遇へば、即ち米銭を発借して、以て葬礼を全うせしむ。且貢賦を奉納するの時、力の納賦する無き者を見れば、即ち亦借給して賊を完うせしむ。且前年、疫癘流行するの時に、銅銭三千五百貫文を動発し、利息を加へずして村人に派借し、以て療資を助く。更に時勢を看察し、米銭を発給して以て救恤を行ひ、挙村の人民感心せざるは無し。伏して乞ふ、褒奨を酌賜せよ等の由、耕作当及び頭目等呈称し、田地奉行・大美御殿大親・総司・検者・指揮司等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて上布三疋を賞賜して以て褒典を示す。