[本文1998]【本年、久米具志川郡山里村の山当安里仁屋の功労を褒嘉して越階して黄冠に陞せ併びに白木綿布三端を賜ふ。】久米具志川郡山里村の山当安里仁屋は、職務を励修して未だ少しも怠惰せず。且上届子年八月、該郡の船隻、公物を装載し、兼城港に在りて、繩を繋ぎて風を候つのとき、忽ち暴風に遇ひ、其の繩磨断して、正に危難の間に在り。該安里、急ぎ本船に駕し、又水中に入り、繩を繋ぎて救護す。又上届辰年七月、宮古島の船隻、公布を載運して兼城港に停泊するの時、ユに暴風に遇ひ、巴那崎に漂到し、礁を衝きて損壊す。該安里、繩子を抛下して公布箱を撈起す。又上届巳年五月、具志川郡の船隻、公布を装載し、兼城港に在りて開洋し、具志川村洋面を駛せ過ぐるのとき、ユに風の根の転旋するに遇ひ、錠を抛ちて停泊す。奈んせん風波猛起し、正に危急に在り。該安里、仲里郡に飛び赴き、小舟を雇ひ来りて駕し、該船に上りて船人と商議し、旧に仍りて兼城港の外洋に帰到せしめ、其の公布箱を将て、尽く小舟に載せて上岸す。其の本船に至りても、亦繩を繋ぎて救護す。又去年八月、具志川郡の船隻、諸凡の公物を装載して、順風を等候するの時、ユに大風に遇ひ、経に繩子を加へ繋ぎモ檣を}去すると雖も、奈んせん風波漸く猛るに因り、ス繩半ば断ち、船上人等連忙して上岸し、船、将に覆没せんとす。該安里、船人と相議し、一同に叶して上船し、更に水中に入り、百般拮据して船隻を保全し公物を失はず。是れに由りて朝廷、越階して黄冠に陞せ、併びに白木綿布三端を賜ひて、以て褒典を示す。