[本文2009]【本年、勝連郡比嘉村の知念筑登之親雲上曁び比嘉村・浜村・平敷屋村の人民十八名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】勝連郡浜村は、只一井を頼りて以て汲用を為す。小旱に遇ふと雖も、其の水乾に就く。又有る所の水田も、多く天沢に頼り、禾苗秀でず、一たび旱魃に遇へば、水乾涸に就き、以て稲を栽ゑ難し。村人意謂へらく、港原南方岩下に在りて一井を掘り開けば、必ずや混々たるの泉を得んと。乃ち、其の井を掘り及び堤井を設くるの費を計るに、已に銅銭二万二千四百五十三貫二百五十文に及ぶ。奈んせん村民困疲し、力の備弁する無し。幸に比嘉村の知念筑登之親雲上有りて、銅銭二千六百九十一貫二百五十文を動発し、比嘉村・浜村・平敷屋村の人民十八名を率同して、水井・堤井を掘り開き、更に溝洫を決排して、以て水道を通ず。時に厥の後より旱魃に遇ふと雖も、用水余有り。而して附近の水田に至りても、亦涸裂の憂無し。又兼久の地畝の土性瘠薄なるを見て、新に水田八百九十九坪七分を開き永く百姓の益と為る。是れに由りて朝廷、知念を賞して越階して座敷位に陞せ、十八名を賞して各爵位を賜ひ、以て褒典を示す。