[本文2011]【本年、渡嘉敷郡首里大屋子金城筑登之を褒嘉して爵位物件を賞賜す。】渡嘉敷郡阿波連村は、慶賀祭祀の時に逢ふ毎に、那覇に前み抵り、焼酎より以て諸物に及ぶを買ふこと多く、財を費すこと少からず。其の土俗に至りても、亦善美ならず。該部首里大屋子金城、其の村掟役に任ずるの時、其の費を停止し、其の俗を改正す。又該村、耕作当・山当・木眉細工ゆ交代の時に遇ふ毎に、其の欠を頂がんと欲する者は、従前駅亭に呈請し、人を選ぶに便ならず。該城、之れが為に照料し、改めて先づ村役に呈し、然る後駅亭に詳薦するの例と為す。時に厥の後より議して人才を選び、最も其の精を見る。又該城村の為に照料し、貢賦の全納を俟ち、即ち其の由を以て駅亭に報明し、併びに百姓人等援きて以て例と為す。但に此れのみならず、有る所の貢賦曁び郡中の費は、預め時勢を察し、百姓に着令して之れが備弁を為さしめ、富家に借給し、加ふるに利息を以てし、貢賦・郡費を奉納するの時に当り、之れを取りて弁を為し、百姓をして労苦に至らざらしむ。又渡嘉敷村在番舎館の租米は、向例、村民をして公弁せしめて館主に交給す。該城、掟役に任ずるの時、着令して其の舎館を以て改めて公役と為し、其の租米を以て村に納入し、以て貢賦の補と為さしむ。又杣山の樹木漸く憔悴に就き、造船の材木、以て調辧し難し。更に山に入りて木を伐る者、昔日に倍す。該城、山木の盛衰を見察し、其の衰に就くの処は、年期を立定して、確かに伐剪を禁ずれば、日後必ずや牛山の美有らん。該城、村の為に照料して利を貽すこと少からず。是れに由りて朝廷、黄冠併びに中布二端を賞賜して以て褒典を示す。