[本文2074]【本年、八重山島竹富村の大山仁屋を褒嘉して爵位を賞賜す。】八重山島竹富村に有る所の六端帆船は、原、鉄錠無し。一たび大風に遇へば、船を泊するを得ずして屡々損壊を致す。去年、本村の大山、之れが為に慮を発し、有る所の大米一石二斗五升起を将て、鉄錠一門を買ひ求め、村民に給発して以て泊船の用と為す。且貧民を憫み、米粟四石八斗九升余・烟草三百五zを分給して、諸凡の貢賦を完納せしむ。又本村冶工の用ふる所の風箱は、大いに破壊に就き、以て農器を鋳造するの妨を致す。該大山、大米一石二斗五升起を将て、風箱を造給し、以て農器を鋳造するの用に備へしむ。又本村、貢賦を解運するの時、原、北泊磯辺に木屋を設造して穀物を保護す。奈んせん該屋大いに壊れ、力の蓋起する無し。該大山、自ら資斧を捐して堅固に改造し、以て穀を護るに便す。且粟種に用を欠く者に於ては、其の種一石を分給して以て播栽の用に備へしむ。但に此れのみならず、村の為に益を図ること数ふるに勝ふべからず。伏して乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、該村百姓・胥役等僉呈し、該島検見役・在番・頭目等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて筑登之座敷位を賞賜して以て褒典を示す。