[本文2078]【本年八月、主上、国相尚惇大里王子朝教を召して諭旨を面示す。】諭に曰く、人の君たる者は上に居りて下を馭し、行ふ所の政事、日に万機有り。凡そ大臣より諸士に至るまで、務めて須く忠志を振励し朝政を輔佐して、国家をして太平の治に帰せしむべし。是れ朕が託す所なり。乃ち聞く、近年逆心の徒有りて、私を挾み人を惑はして以て不軋を行ふと。朕之れを聞き深憂痛痕す。爰に教条六款を述べ、後に開列す。一、凡そ臣士たる者は、貴と無く賤と無く皆累世の臣たり。務めて須く善く職守を修めて以て忠誠を竭すべし。況んや復、大臣乃ち世人の仰ぐ所たるをや。凡そ国風の美徳・邦家の安危は、専ら其の行ふ所の善否に係る。更に宜しく正直私無く清慎方有りて、務めて隆治を輔成すを以て要と為し、方に股肱の奇に負かざるべし。一、凡そ読書する者は、専ら身を修むるを以て本と為し、必ず須く経伝を講究して心を明にし行を正し、而して其の余力を用ひて以て国家用ふべきの諸芸の文を習ふべし。切に名利の学を好むこと勿れ。一、人、奢華を好めば、特に財を傷ひ家を傾けるのみならず、而も亦俗を妨げ民を害ふ。宜しく当に敦く節倹を守るべし。得て妄りに燕飲遊観の楽を作すこと毋れ。一、凡そ官位の高下は乃ち人才の賢否に係る。各当に身を持して正を守るべし。得て権門に出入し其の抬挙を求むること勿れ。一、人、邪説を倡へて国政を議論し、或いは流言を布きて官長を誣害する者は、名教容れず郷党歯せず。常に宜しく痛省すべし。一、農民は、実に国家の本たり。人の上たる者は、教養善を尽くし、其れをして事に趨き業に楽しましめよ。是れ行政の首にして、国家を平治するの基なり。近ごろ聞く、諸郡教養善からず、民生憔悴すと。朕深く之れを憂ふ。凡そ采地を授くる者は、必ず須く民の為に慮を発し、之れをして疲を挽き興に就かしむべし。郡中の吏胥に至りても、亦当に此くの如く籌画すべし。愛民の政已に修めて保赤の懐も亦慰むるに庶からん。以上六款、卿、宜しく大臣・庶士に飭行して、一体に遵照せしめ、各其の道を尽くし、国家を盤石の安きに奠めて、以て予が憂勤の意に副ふべし。欽しめよや。