［本文2084］【本年、久米島仲里郡前任地頭代亡宇江城親雲上・前任真謝村掟亡与世原仁屋の二名を追賞して各中布を賜ひ、該郡人民十四名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】久米島仲里郡真謝・謝名堂の両村に有る所の水田産米三十五石余の区は、原、潦水に属す。小旱に逢ふと雖も、水涸れ稲枯れて、一切の賦税は概ね賠納を行ひ、両村の百姓共に困窮に及ぶ。此れに因りて百姓人等情を合せ、銘那口原源頭古佐里川山に於て、堤井を鑿闢して以て該田に注水するの備と為さんことを禀請す。随即在番及び其の筆者并びに該島に前み赴きて諸務を督理するの員役等、相共に会議し、地頭代宇江城親雲上曁び郡民十五名に飭令して、之れが係役と為さしむ。該宇江城等、該両村百姓を督率し、堤井を掘開し、石を以て堅く築き、以て貯水に便す。其の井、長さ十四間二尺・横七間半、築くに両重を以てし、高さ一丈三尺。又樋、長さ四間四尺を設架して以て注水に便す。時に厥の後より田水涸れず、少しも稲枯るるの憂無し。但に此れのみならず、日後其の附近の荒土を将て水田を闢き成し、其の水を注入すれば、則ち応に産米二十余石を収獲すべし。永く両村に之れ益を貽さん。是れに由りて朝廷、該郡民十四名を賞して各爵位を賜ひ、地頭代宇江城・真謝村掟与世原の二名は、共に身故するに因り、中布各二端を追賜して以て褒典を示す。