[本文2088]【本年、読谷山郡宇座村の山川筑登之を褒嘉して爵位を賞賜す。】山川は、曾て父母に善く孝道を尽くし、今、家人に於ても、亦慈善を致す。但に此れのみならず、内は親族より外は村人に至るまで、交はるに和睦を以てす。葬礼を具へること能はざる者に遇へば、即ち米銭を与へて以て其の礼を全うせしむ。且該村は、先年貢を欠き賦を滞り多く欠債を負ふ。該山川、銅銭八千四百貫余文を将て、息を賤くして発借し、以て其の債を償はしむ。又上届戌卯両年より以て本年に及ぶまで、五穀登らず、煢々たる小民日食用を欠く。該山川、小米六石八升先を発給するの外、銅銭六千貫文を将て、息無くして分借し、以て日食を継がしむ。且曾て痲疹・庖瘡に伝染し、曁び上届子年疫癘流行するの時、多く療資を欠乏する者有り。該山川、其の家を視察し、或いは大米・小米を送り、或いは日用の物件を給して、以て其の資をWく。更に兼ぬるに遍く各家を走りて、教ふるに調治の法を以てす。又高志保・渡慶次・儀間の三村は、先年以来一轍に困疲し、貢賦を欠すること有るの時に逢へば、或いは息を貴くして告借し、或いは身を他家に鬻ぎて、以て貢賦を全うす。該山川、上届亥年以来、該三村欠貢の時に逢ふ毎に、息を賤くして発借し典質を収めず。今夫れ山川、益を貽すこと少からず。行年も亦已に七十余三。伏して乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、宇座村及び高志保・渡慶次・儀間三村の頭目等僉呈し、各村掟・該郡酋長・下知役・検者・両総司・田地奉行等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて黄冠位を賞賜して以て褒典を示す。