[本文2092]【本年、太平山島友利村の友利仁屋、伊良部・砂川両村の人民六名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】太平山島友利村の友利仁屋は、身を修むるに正を以てし、事を行ふに善を以てす。外は農事より内は家業に至るまで百般据拮し、諸凡の貢賦少しも欠無し。且老父の家に在す有り。歳七旬を逾ゆ。優に衣食を備へ厚く孝養を尽くす。且親族人等に於ても、交はるに和睦を以てす。村民の貧乏者に於ては、屡々物件を給して以て用度に資す。且該村は、客歳七月の際、旱魃ノを為し、栽うる所の薯蔓結実稀少にして窮簷の羣黎日食継ぎ難く、貯ふる所の粟種も、亦已に喫ひ尽くして、正に饑餓の際に在り。該友利、目撃して心傷み、大麦両包余・粟種一包余・豆醤五十七斤を分給して、以て嗷々待哺の急を救ふ。又伊良部村は、近年以来饑饉踵を接し、多く貢賦を逋れ、其の困疲を極む。幸に該村伊良部仁屋・下地仁屋・松原仁屋・武謝与那覇・加根伊良部等五名有り。村民を振励し、既に農事を治め、復、家業に勤めて、一切の年貢欠賦は概ね納清を致す。之れに兼ぬるに村民に着令して麻苧・藍草を加植して、以て公布・私衣の用に備へしむ。又砂川村は、上届子年饑饉先づ臻り、熱病嗣いで行り、農業を修めず貢賦を弁じ難し。幸に該村砂川仁屋有りて、胥役の命令に遵依し、村民を引誘ひて農業に胼胝せしむ。時に厥の後より諸凡の貢賦、期に照して完納し、毫も遅滞無し。且村民に着令して地畝を墾成し窮民に分授するの外、更に荒土を闢きて小米を播種し、以て貢賦の補と為さしむ。但に此れのみならず、貧乏者に於ては、給するに小米等の件を以てし、益を村に貽すこと少からず。伏して乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、各村胥役等僉呈し、検見役・在番・頭目等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて各爵位を賜ひて以て褒典を示す。