[本文2093]【本年、八重山島大川村の平良仁屋等五名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】八重山島大川村の平良仁屋は、上届丑年世持職に任じて以来、凡事村民と相議し、善く指揮を行ふ。且東作登らざるの時に于て、大米五斗起・小麦七斗五升起・下太豆五斗起を将て本村に交給し、以て諸凡の費用に備へしむ。且村民会植の藍は、苗の栽植する無し。該平良、価米二斗五升起を動発して其の苗を購買し、村民に送給して以て其の用を補はしむ。且苧を買ふの価米四石三斗五升起を将て本村に発給し、以て其の需に備へしむ。且村民田畝を墾闢するの時に、酒を買ふの価米一石起を発給して以て鼓舞を示す。且父母に背かるるの零丁孤若者五名を将て、己が家に移し来り、意を加へて撫養す。其の受くる所の年貢諸賦に至りても、亦賠納を行ふ。又宮良村の佐茂屋前盛は、上届巳午両年、家道貧乏にして貢賦弁じ難き者を見て、大米三石二斗起を分給して以て賦額を全うせしむ。且稲種の用を欠く者を見ては、七斗五弁起を派給して以て播栽の用に備へしむ。且つ牛を畜する能はずして農務の用を欠く者を見て、二口を送給して以て其の用に備へしむ。又盛山村は、多年困疲し、欠く所の貢賦共計大米六十余石。窮民人等、例貢を奉納することを除くの外、其の欠賦を納むること、甚だ堪へ難きに属す。幸に白保村の山戸平田有りて、十七升紺島布三端を発給して以て其の用を補ふ。且鋤xの用を欠く者を見て、四把を造給して以て其の用に備へしむ。又郡民をレ募して広く猪柵を囲むの時も、亦老牛一口を給して以て其の労を慰む。且資の造家する無き者を見て、房屋一間を造給して以て居住を為さしむ。且農務繁多の時、牛を畜すること能はざる者を見れば、自己の耕牛を発借して其の質を収めず。又大浜村の樽上里は、曾て壷瓦及び日用の陶器を焼造するの法を学び、小工に充てられてより大工に擢んでらるるに至るまで、多年勤職して以て島中公私の用に備ふ。現今行年五十余歳。又新城村の加那宮城は、村人と交はるに和睦を以てし、其の牛を畜する能はずして農務の妨を致す者を見れば、自己の耕牛を発借し、質無くして耕を幇くるの外、更に神酒を給して以て振励を示す。且貢を逋れ賦を滞る者を見て、大米を発給して以て賦額を完うせしむ。且或いは林木を伐り、或いは海魚を漁して、以て公用を弁じ、或いは地船を造るの時、家資貧乏者を見れば、飯食を与給するの外、更に神酒・焼酒を給して以て鼓舞を示し、甚だ村中の益と為る。伏して乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、各村百姓等僉呈し、胥役・検見役・在番・頭目等印結を加具して朝廷に禀請す。是れに由りて各爵位を賜ひて以て褒典を示す。