[本文2108]【本年、獄廷大屋子毛長仁比屋根親雲上安達・呉承業与儀筑登之親雲上幸顕・向重光小橋川里之子親雲上朝昇・署任仮筆者向行仁仲本里之子朝嗣等を遣はし、大筑一名・筑佐事三名を率同して、宮古島に抵り、犯人を審問せしむ。】宮古島の人民、既に落書を該島検見役武富親雲上の旅館に投逓し、復、讒書を日本監守館に寄逓する者は、此れ前任島尻与人に係る等の由、本年二月、該島審間して報じ来る。但々審問未だ明らかならざるに因り、再び詰問を行ひ、由を具して報明するの処を将て、該島に飭行す。去後茲に報称に拠れば、再び詰問を行ひ即ち云ふ、前任島尻与人、前任多良間首里大屋子・前任与那覇目差・前任池間目差・亡洲鎌与人の三男平良仁屋等を勾引し、相共に党を結び、上届午年、落書を武富旅館に投逓し、去夏、讒書を監守舘に寄逓す。其の後既に該両書を将て、頭目下地親雲上に遞給して之れを看せ、復、其の情由を将って、説きて惣横目上地与人に給して之を聴す等語と。随ひて該下地・上地両人に詢ふに、其の云ふ所と毫も齟齬無し等の由、冊を具して報じ来る。夫れ衆口の一詞に因れば、則ち当に再びは詰問を行ふこと無かるべし。但々讒書を監守館に寄逓するは、此れ叛逆の事に係る。特に重罪の本犯なるのみならず、而も妻子・兄弟・祖孫に至るまで、亦罪譴を免れず。誠に軽からざるに属す。然れば則ち只該島の鞠審を将て輒ち罪責を行ふは、実に妥ならざるを覚ゆ。且其の鞠審の際、或いは詰問の周からざる有り、或いは供称の相異なること有らん。乃ち員役を遣去して逐細審問すること無くんば、如何にしてか以て其の罪を議定するを得んや。乞ふ、察諒を賜へ等の由、獄官等朝廷に禀明す。随即其の大屋子毛長仁・呉承業・向重光・署任仮筆者向行仁等を遣はし、大筑一名・筑佐事一名を率同して該島に抵り、犯人を審問せしむ。十月十日該地に到り、翌年六月二十三日回国す。