[本文2114]【本年、八重山黒島村の本原仁屋を褒嘉して爵位を賞賜す。】本原は、天資粋美、村人と交はるに和睦を以てす。而して家貧乏にして貢賦を弁じ難き者を見れば、即ち粟二石二斗五升起を給して以て賦額を全うせしむ。又水土好からざるの時、病症に染患する者を見れば、即ち粟十石三斗一升二合五勺起を給して以て療治に便せしむ。且粟種欠用者に於ても、亦粟三石起を給して以て其の用に備へしむ。又黒島村は、素、水田無く、専ら乾田の出産に頼りて、諸凡の貢賦を納償す。上届辰年、地畝を墾し広めて、以て貢賦を調弁するの便と為す。此の時該本原、神酒中壷八個を発給して以て其の労を慰む。且去年該村駅亭を修葺するの時も、亦焼酒二十沸・神酒中壷四個・老牛一口を給して以て鼓舞を示す。但に此れのみならず、更に鉄五十zを給して以て釘を造るの用に備ふ。此の恩此の徳感激して忘れず。伏して乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、百姓僉呈し、胥役・検見役・在番・頭目等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて筑登之座敷位を賜ひて以て褒典を示す。