[本文2115]【本年、与那城郡の人民池味親雲上等二十名を褒嘉して爵位を賞賜す。】与那城郡伊計村は、原、伊武那川の一泉有り。奈んせん該川と村とは相離るること已に四合計りの遠きに及ぶ。且其の地勢を見るに、既に険阻に属し、復、海?溝に在りて往還易からず。而も溜池に至るも、亦掘鑿し難く、曾て已に樋を架して水を注ぐ。是を以て百姓等其の川に到るの遅速を以て其の汲水の先後と為せば、則ち担に用水の裕ならざるのみならず、更に力を汲水に奪はれ、耕稼に暇あらず。幸に屋慶名村前任夫地頭池味有り、謀を尽くし慮を発し、伊是名原に在ちて源泉を鑿得するに、果して甘水の混々として湧出する有り。其の大きさは五分方なり。而して道路に至りても、亦二合の近きに属す。意謂へらく、此の源泉を将て溜池を掘り成し、更に堤井陂塘を鑿ちて、其の近辺に於て新たに水田を掘れば、永く村中の益と為らんと。因りて其の費を計るに、殆んど銅銭二万二千五百貫余文の多きに及ぶ。奈んせん貧窮の小島毫もu銭の力無し。此れに因りて下知役・検者等、命を田繩ッに請ひ、該池味に着令して屋慶村の人民七名・西原村の人民三名・平安座村の人民一名・伊計村の人民八名を率同し、各自資を捐して以て前項掘開の計を為さしむ。該池味等、其の令に凛遵し、溜池を掘り成す。其の長さ二間・横三尺・水深三尺。且其の下面に於て堤井を鑿開す。其の長さ三間五合・横三間・水深五尺。且其の南方に於て陂塘三区を掘開す。共に長さ五間・横三間・水深六尺なり。且其の一帯の地畝二千五百坪の内に、新に水田一千一百坪を掘り、其の余の一千四百坪は、乃ち沙多く水涸るるに因り、田を掘るに堪へず。費銭を省き得たるもの已に三千八十六貫七百文に及ぶ。因りて謂へらく、其の銭を将て井を村内に鑿てば、愈々村中の益と為らんと。乃ち田繩ッの命を請ひ、石を以て井を築く。其の高さ一丈五尺・長さ一間五合・横七合。其の井口は石を鋪きて平と為す。長さ一間九合・横一間七合。其の周囲は石を築きて垣と為す。長さ三間五合・横二間六合・其の高さ各四尺。今其の泉水是れ少しく塩気を帯び、煎茶の用に堪へ難しと雖も、然も百姓人等平日汲みて以て用を為し、間隙を費さず、甚だ村中の益と為る。乞ふ、褒賞を酌賜せよ等の由、惣耕作当・酋長等僉呈し、検者・下知役・両総司・田地奉行等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて池味を賞して越級して座敷位に陞せ、十九名を賞して各爵位を賜ひて、以て褒典を示す。