[本文2128]【本年、今帰仁郡寒水・岸本・玉城等の三村の、改めて村籍を遷すことを准す。】今帰仁郡寒水・岸本・玉城等の三村は、多年困疲し、経に疲を挽き興に就くの術を求めて百般指揮すると雖も、而も其の効を見ず。居民に至りても、亦繁昌せず。該三村の百姓等、議して謂へらく、其の富庶を致さざる者は、殆んど是れ村籍を建つる所の地理の不雅に有りと。乃ち地理師を延請して風水を観看せしむるに、即ち云ふ、寒水村を看るに、其の右辺に石砂の流去する有りて、株ヘの美を失ふ。其の前面の左右に山峰の高く聳ゆる有りて、既に峭風を受け、復、流水を受く。而して前面に山有るは、此れ皆地理雅ならず。岸本村を看るに、其の後頭に山有り、其の前面左右も亦石砂の流去する有りて、村範の美を失ふ。亦其の四面は地高くして構ふ所の人家、山前に近逼し、多く陰気を受く。而して土地窄小。此れ皆地理雅を失ふ。玉城村を看るに、其の四面、近くに村籍を鎮めるの竃ウく、其の後頭の山峰は恰も反弓の形に似たり。其の家屋の構へは皆丘陵に在り。而して其の村の両傍に泥水の泥流する有り。此れ皆地理の雅を失ふこと有り。今建つる所の三籍は、地理の美に就くの術を施す能はず。若し改めて村籍を遷さざれば、則ち日後困疲益々増し、人口益々衰へん。宜しく応に寒水村を将て、本村前面の驛路を改墾し、岸本・玉城両村百姓受くる所の地に移建し、岸本・玉城両村を将て、改めて保加麻原の地に遷すべし。三村、地理の雅を得て家富み人庶るに庶からん等語と。夫れ此の如く村籍を改遷すれば、則ち担に地理の美を得るのみならず、一は田畝の便有り、一は用水の饒有り。該師云ふ所の如く、村籍を改遷するを准すを懇ひ且該地を租借すれば、則ち妨碍するの処有らん。因りて私に地籍を交換するの議を定め、更に乞ふ、此の如く施行するを准せ等の由、該三村の百姓等僉呈し、田地奉行・両総司・地理師・下知役・検者・酋長等印結を加具して朝廷に禀明す。是れに由りて其の請ふ所を准す。