[本文2141]【本年、佐敷郡津波古村の百姓二十名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】佐敷郡津波古村は、原、村外六百間の処に於て、泉水の湧出すること有るに因り、竹樋を村前西方に架け来りて以て汲用を為す。但々其の架するの樋、精ならざるに因り、屡々損壊を致して水多く逆行し、多く修葺の費を致すこと論説を待たず。而して村民用水甚だ敷かざるに苦しむ。必ず須く其の泉口を将て、石を用ひて造り調へ、塗るに三合泥を以てし、松を用ひて樋を成し、復、石を築きて池長さ二間・横三尺を成さば、永く村中の利益と為るべし。因りて其の費を計るに、已に銅銭二万一百五十余貫文の多きに及ぶ。奈んせん百姓困疲し、勢必ずやu銭・借銭して、以て興作の需に備ふること能はざらん。時に村民二十二名有りて、相共に力を合せ、自ら資斧を費して、全く前項築石架樋の事を成し、永く利益と為る。是れに由りて朝廷、各爵位を賜ひて以て褒典を示す。