[本文2142]【本年、越来郡の百姓二十六名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】越来郡加良川佐久原に、素、泉水の湧出する有り。儘く五六十家の用に供すべし。但々築井の功を施す無きに因り、汲水甚だ難し。且胡屋村の境内に有る所の宝川も、亦築地の功を加へず、旱魃に遇ふ毎に汲水易からず、多く隙間を費す。且其の川の左右は、原、行野の路に係る。但々崎嶇且つ隆なるに因り、往還便ならず、固より両川を築成し路途を修作せざるべからず。乃ち其の費を算するに、已に銅銭二万六千五百貫余文の多きに及ぶ。奈んせん百姓困疲し、勢必ずやu銭して需に備へること能はざらん。幸に村民二十六名有り、共に心力を合せ、自ら資財を捐して、加良川佐久井に在りて、石を築き池を成す。高さ一丈一尺・長さ六尺九寸・横三尺。更に汲水の所を設け、また周囲の飾を為す。且宝川に在りても、亦石を築き池を成す。長さ九尺・横二尺八寸・高さ一丈四寸。其の汲水等の処を修すること彼の井と相同じ。且其の川の左右の行野の道に在りても、亦岩石を除し、更に石を鋪き階を築きて、以て汲水行野の便と為す。且該加良川佐久に、素、川条の設有り。今已に此くの如く石を築きて池を成せば、則ち該川面、漸を遂ふて忠するを恐れ、乃ち石を以て之れを築き、永く利益を貽す。是れに由りて朝廷、各爵位を賜ひて以て褒典を示す。