［本文2144］【本年、勝連郡平安名村前任地頭代浜親雲上曁び人民四十四名を褒嘉して各爵位を賜ふ。】勝連郡平安名村は、水田素より少く、都べて天沢に頼りて禾稲を栽種し、小旱に逢ふと雖も田水涸に就き、西成望を失ふ。且井川素より少く用水足らず。幸に前任地頭代浜親雲上有り、村の為に籌画し、各処を巡察するに、乃ち小舍覇多宇原に泉水の湧出すること有るを見、村民に告知す。隨ひて井口を鑿開し堤井を闢設し溝渠を決排して新田を墾成せんとす。乃ち其の費を算するに、已に銅銭四万八千七百貫余文の多きに及ぶ。奈んせん村民貧乏にして力の調ふべき無し。該浜、人民四十四名を倡率し、相共に資を捐して、井川長さ三間・横四尺・深さ四尺五寸を鑿開す。其の後頭は高さ一丈八尺、其の左右に石を鋪き、連を成すもの六尺五寸、長さ八間・横一間四尺八寸。其の下面に在りて�煦艪�掘り開くもの長さ十二間三尺・横十間三尺・深さ七尺五寸なり。其の後頭に畦を立つるもの長さ二間五合・高さ一丈なり。共に石を用ひて築成す。而して該�燗剣�に在りて、溝渠を決排するもの長さ九百三十五間。其の北方に在りては長さ三百六十間、其の西方に在りては長さ一千五十間・横一尺五寸或いは二尺、以て注水の便を為す。是れに由りて其の附近の旱田を将て、改めて水田を成すもの共計四千一百五十余坪。其の産米約二十石七斗五升余零なり。旧租麦穀二石四斗九升に比すれば、大米一十八石二斗六升を加増す。至若、其の附近に有る所の租米三百二十二石五斗余の水田も、亦該溝注ぐ所の水に頼りて、旱魃に逢ふと雖も、而も水常に満足し、並も植稲時を失ふの憂無し。今其の両項田水獲る所の産米を計るに、已に三百四十石七斗六升余奇に及ぶ。且井川の設有りて、用水優に足り、永く村中の利益と為る。是れに由りて朝廷、各爵位を賜ひて以て褒典を示す。