[本文2165]【本年、八重山与那国村の多和津登野城を褒嘉して以て爵位を賜ふ。】八重山与那国村は、上届辰年、栽うる所の稲粟暴風に吹き損ぜられ、多く稲穂の用を欠く者有り。時に登野城有り、貯ふ所の稲穂二十一包を派給して、以て其の用を全うせしむ。且本村は、鍛冶工器未だ嘗て全備せず、多く妨碍有り。該城、鉄二百zを将て、価銭を受けずして該工に送給し、其れをして工器を全備せしむ。時に厥の後より、農業の器より以て山林の器に至るまで、随ひて求め随ひて造り、一として不足する無し。且単寒下戸の輩を憐れみ、屡次恵を施して以て不足を補ひ、益を村に貽すこと多からずと為さず。是れに由りて朝廷、爵位を賞賜して以て恩典を示す。