[本文2233]【本年、汀志良次村の無系三良上原の孝行を賞して銭文を頒賜す。】汀志良次村の無系三良上原は、其の赤子の時、慈母に背かれ、三歳に至りて両眼失明し、十三に至るに及び、厳父も亦死し、零下孤苦し、専ら継母の養に頼りて以て成長を致す。奈んせん家道素より乏しく、更に兼ぬるに継母身体柔弱にして日常堪へ難し。該三良、菓家の雇ふ所と為り、其の工銭を領して、既に継母の養に供し、復、先祖の祭を奉ず。或いは継母病に染むの時に逢へば、昼夜側侍して厚く療治を行ふ。奈んせん該良、瞽者に係るに因り、継母飯を食ふの時に当り、多少を知り難し。其の吃し完るの後に及び、常に母の腹を摸で、一たび食の少なきに逢ふや、眼涙流失して頻りに加進を請ふ。該母、平日心に感じ、強ひて飯食を致し、以て活命するを得、遂に寿考に登る。該良、益々精力を励まして厚く孝養を行ふ等の由、朝廷に詳明す。即ち其の孝情を嘉して銅銭三千二百貫文を頒賜し、以て盛典を示す。