[本文2286]【本年、八重山島の加那嵩西の功労を褒嘉して、以て爵位を賜ふ。】此の年、八重山島鬚川村の富里田原は、原、種苗の田に係るも、水道塞壅して播種する能はず。是を以て去子年、本村の加那嵩西、自ら資財を捐して、長さ四百尋の溝を決開し、更に善く修葺を加へ、水をして順流せしむ。時に厥の後より苗を播き稲を栽う。且本村に農民七名有り、家道窮乏し、滞ほる所の貢賦備弁するの力無し。該嵩西、其の五人に給するに、各大米五斗を以てし、其の二人に給するに、各大米二斗五升を以てして、貢賦を全備せしむ。且本村に、一名は幼年にして父を失ひ、一名は幼年にして母を失ひて、零丁独苦して依靠する所無きもの有り。該嵩西、該両人を恤れみ、家に移して撫養し、其れをして妻を娶り、更に宅を給して居住せしめ、兼ぬるに地畝・耕牛を給するを以てす。且家資貧乏にして田畝維れ小き者有り、又畜牛の力無くエム続ぎ難き者有り。該嵩西、四十丸の田畝・耕牛一口を恵給す。且百姓人等、公布を調し難き者有り。該嵩西、粗布二端を発給し、価銭を取らず。且本村藍草を種うるの時に会ふも種子敷かず。該嵩西、藍種を発給し、銭を取るを肯んぜず、更に村の為に籌画して、一百六十坪の藍籍を鋤治し種子を播植して、其の価を取らず。且本村は、今年麻苧熟せず、貧苦の小民公布を調し難き者有り。該嵩西、価銭を取らずして麻苧二斤を恵給し、公布を全調せしむ。今夫れ該嵩西、く人民を恵み、永く村に益を貽す。誠に不凡なる者と謂ふべし。是れに由りて朝廷、赤冠を賞賜して以て其の功を表す。