［本文2299］【本年、八重山島鬚川村の伊志登新城を褒嘉して赤冠を賞賜す。】八重山島鬚川村の伊志登新城は、上届三十午年、令に従りて鍜工職に充任し、昼夜励精して、一切の農器、能く製造を行ふ。且少年の父を失ひ母を失ふ者三名を将て、深く憐恤を加へ、己が家に修養すること、親生の子に異ならず。成長に至るに及び、配を択び妻を娶らせ、家籍・農器・牛馬・水田・旱田等を派給して各門戸を立つ。且年歳饑饉にして貢米弁じ難き者を将て、大米三石八斗七升五合を発給す。且家籍無く田畝少なくして貢米弁じ難き者を将て、家籍百坪・田畝五十九籍を恵給す。且房屋壊に就き改造するの力無き者を将て、焼酒五十沸・豚肉二十斤を発給して以て造家の便と為す。又胞兄病に染み貢賦弁じ難く幼児養ひ難きに因り、乃ち精を励まし力を尽くして、常に自己の耕業を帯びて胞兄の田畝を鋤耨し、其れをして貢賦を納め、善く家中の職を修め、篤く祖親の祭を行はしむ。深く貧乏者を恤みて、益を村に貽す。誠に不凡の者に属す。是れに由りて朝廷、赤冠を賞賜して以て褒典を昭にす。